1. 注意事項


2. 詳細

以下の問題のすべてに答えよ。その際に,どこまでがどの問題の解答なのか,わかるように,必ず解答用紙に解答番号を明記すること。

[1](労働一般)

問題

コストという面から見た,単なる本能的活動と労働との関係を,具体例を挙げて説明せよ。その上で,この面から経済活動を特徴付けよ。

解答例

人間はその他の生物と同様に,生命活動,従って物質代謝を行っている。しかし,人間は,他の生物とは異なって,生命活動を本能の赴くまま行う(本能的活動)だけではなく,自分自身で意識的に媒介してもいる(労働)。

単なる本能的活動は,通常,コストとして意識されないし,またコストとして削減することが不可能だったり,無意味だったりする。これに対して,自覚的活動である労働は,わざわざやっていることだから,コストとして意識されるし,またコストとして削減される。例えば,〔具体例については省略。講義では単なる本能的活動を人間がコストとして意識したりコストとして節約したりするということができない例として,心筋運動や呼吸運動を,また労働をコストとして意識したりコストとして節約したりする例として,菠薐草の栽培を挙げておいた。〕

このように労働がコストであるという面から見ると,経済活動は社会的物質代謝の効率的運営として特徴付けられる。


[2](協業)

問題

前近代社会における協業と現代資本主義社会における協業とを,具体例を挙げて比較せよ。

解答例

協業とは,互いに協力し合うような共同労働のことである。直接的な共同労働の形態としての協業は,現代資本主義社会に限らず,人類史のどの時代においても行なわれていた。また,現代資本主義社会においても,資本主義的営利企業の内部だけではなく,家族をはじめとしてありとあらゆる組織において協業が行なわれている。

前近代社会においては,基本的には,協業は経済的活動においては比較的に小規模であった。例えば〔具体例は省略。講義では,前近代社会における日常的経済活動の基本的単位が家族や村落共同体であり,そうであるからこそ協業も通常はこのような地縁血縁に制約された規模で行なわれていたという例を挙げた。〕たとえ大規模な協業も行なわれたとしても,それは通常,日常の経済活動にとっては例外的・偶然的なものであった。例えば,〔具体例は省略。ピラミッド建設とか戦争とか。〕

これに対して,現代社会においては,そもそも企業は営利活動のために血縁・地縁に関わりなく数多くの従業員を雇用する。そして,一般に生産力を上昇させる競争の手段として,現代資本主義社会における協業は大規模になる。しかも,一般に機械設備の客体的編成を通じて,特に情報ネットワークを通じて,労働が行なわれるということの結果として,現代資本主義社会における協業は,もはや経営上の選択ではなく,選択の余地がない必然的なものであり,企業の内部では日常的に行なわれている。こうして,社会的条件で見ても技術的条件で見ても,現代社会においては協業は大規模かつ必然的な労働形態になっている。例えば,〔省略。講義ではコンピュータネットワークを通じての協業を例に挙げた。〕


[3](分業)

問題

企業内分業と社会的分業との違いについて,同じ商品の生産過程を例にとって,具体的に述べよ。

解答例

分業とは総労働を分割して各経済主体に配分するということである。現代資本主義社会では,一方では,社会全体の内部で社会的分業が行なわれており,他方では資本主義的営利企業の内部で企業内分業が行なわれている。社会的分業と企業内分業との決定的な違いは,分割された労働の統合が社会的分業では市場を通じて行なわれている(商品交換によって媒介されている)のに対して,企業内分業では直接的に行なわれているのであって,市場を通じて行なわれているのではない(商品交換によって媒介されているのではない)ということである。

例えば,〔具体例は省略。講義では,シャツという商品の生産過程を例にとって,綿布裁断を外注化した場合と内製化した場合とで,社会的分業と企業内分業とを区別した。〕


[4](知識と経済)

問題

知識と経済との関係を,(1)どの人類社会にも共通な共通な経済活動のレベルと,(2)現代的大工業のレベルとに分けて,述べよ。

解答例

どの人類社会にも共通な経済活動を考えると,そもそも労働は意図的・意識的な活動であるから,人間は労働において対象についても自分自身についても必然的に知識を生み出す。そしてまた,全く同じ理由から,ひとたび知識を生み出すやいなや,労働はその知識の応用によってコストとしての自分自身を節約する。このように,労働したがって経済活動は知識の産出でもあるし,知識の応用でもある。

現代的大工業においては,この知識の応用が科学的知識の意識的・計画的応用という形で十分に実現される。すなわち,科学的知識,すなわち公開された体系的知識によって知識が一般化されて,人間の精神的・肉体的活動が生産手段と一体化するのとともに,そのような知識が人間にとって取得可能=共有可能になっている。